旋盤・彫金に使う道具のお話

旋盤を使って作る手作り結婚指輪

MITUBACIの職人・新藤です。本日は、MITUBACI工房にある旋盤について紹介します。

MITUBACIでは新たに手作り結婚指輪のオプションとして、「旋盤加工」というオプションも追加されました。

旋盤ってどんな機械なのか、どんな事ができるのか、どんな人に向いているのかをお話させて下さい。

旋盤とは

旋盤とは、削りたい金属を固定し回転させ、鋼材やダイヤモンドの刃を押し当てて切削する機械です。

様々な機械のパーツや、ねじなどを精密に加工する事ができます。

指輪の場合は、様々な形状に削る事ができます。

通常旋盤は固定する金属を外側から掴む様にして固定しますが、指輪の場合は指輪をチャックとよばれる台に固定します。チャックは真鍮でできた器具で、指輪のサイズごとに用意されています。指輪をチャックにはめてから、チャックを旋盤に設置し、内側から広げる様に固定します。これは「開きヤトイ」と言ってちょっと特殊な固定の仕方になります。

しっかりと固定できた事を確認して足元のスイッチを押すとモーターが回転し、ベルトを通じて軸を高速に回転させます。

回転している指輪に、固定したバイトと呼ばれる切削工具を押し当てる事で表面を均一に削り出すことができます。

手作業では出す事ができない、一周均一な形状を作り出す事ができるのが旋盤加工の特徴です。

旋盤の動画

旋盤を使うために求められる精密さ

手作業と旋盤を併用する難しさ

MITUBACIでは鍛造の加工と合わせて旋盤加工を行っていますが、ベースとなるリングの制作は手作業がほとんどです。旋盤加工は正確に削り出す事ができる半面、削り出す元のリングの精度が高くないとしっかりと固定もできませんし、精密な加工ができません。

旋盤を使うために必要な指輪の精度は、指輪の幅のどの位置を測っても、誤差が最低でも5/100mm以下にする必要があります。

5/100mmがどのくらいの精度かというと、皆さんが良く使うコピー用紙の厚さが大体7/100mmですので、それよりも小さい値です。紙一枚分の厚さの誤差は旋盤にとっては大きな誤差になります。

ミル打ち加工の難しさ

サイドミル

旋盤加工には精密さがもとめられますが、特にミル打ち加工をする際にはより注意が必要です。ミル打ちを指輪に入れる場合は、最初にミル打ちを入れる箇所に溝を入れます。指輪の厚さに誤差があると、均一な幅の溝ができないため、ミル打ちがきれいに入りません。

正確な機械の為、わずかな寸法の誤差も許してもらえないのが旋盤加工の難しさであり、完成した指輪の価値になるわけです。

金属を贅沢に使う、指輪の旋盤加工

旋盤加工で指輪を作る場合、完成した指輪の金属よりも多くの金属を必要とします。

ベースとなるリングは、出来上がりの形や寸法より厚く準備をする必要があるため、多くの金属を準備する必要があります。

一方、鋳造の製法だと原型を型にとり、石膏の型を作り、溶かした金属を流し込みます。

小さな鋳物だと考えてもらえると分かりやすいです。

石膏から取り出した指輪はほぼ形は出来上がっています。石膏から取り出した指輪は磨きますが、旋盤加工の様に多くの金属を削ったりする事はありません。

鍛造と旋盤加工を使ったリングは丈夫(鍛造製法)で贅沢(旋盤加工)な製法なのです。

MITUBACIの工房にある旋盤の紹介

MITUBACIの工房にある旋盤は、1972年製 江黒製 PH6L−4H 精密高速卓上旋盤 です。

江黒は、現在では 株式会社エグロ – EGUROという会社なっていますので、漢字で 江黒 と書いてある時点で年代を感じますね。

MITUBACIの工房では、この旋盤に合わせて作業台を作成しました。水色に塗られていて存在感があります。

コンピュータを使った旋盤もありますが、この旋盤はすべてを手作業で操作します。

この旋盤の優れているところは、2つあります。

1つは、本体がコンパクトで扱いやすいところ。

もう1つは、リングを見ながら切削が可能なところです。

リングを削り出すときに、リングを見ることができると、職人の思い通りに微調整しながら切削することができるので、より細かい作業が可能になります。

切削する金属によっても削れ方も変わってきます。そのため、ルーペを使って切削される状態を見ながら刃を押し当てる加減は経験を必要とします。

MITUBACIで使用しているバイト(切削工具)について

MITUBACIで使用しているバイト(切削工具)は2種類あります。

1.ダイヤモンドの刃

2.コンパックスの刃

コンパックスというのは、ダイヤモンド焼結体というもので、ダイヤモンドを加工して作られる、ダイヤモンドよりも衝撃に強い物質です。

2種類の刃はどちらとも、とても高価なのですが硬さがある刃で削る事により、金やプラチナをしっかりと切削することが可能です。

正確に旋盤を使うには技術が必要ですが、旋盤を使うと、リングの表面を一周同じ厚みで甲丸の形状に加工したり溝を入れたりが短時間でできます。人の手でヤスリなどを使い加工するよりも早く精密に幅広いデザインの結婚指輪をお作りすることができます。

旋盤はオーダーメイドの結婚指輪の制作でも使用してます。

日本の職人が丹精込めて作るオーダーメイドの結婚指輪のページはこちらです。

手作り結婚指輪の旋盤加工は、こんな人におすすめ

旋盤加工・オーバル

手作り結婚指輪の旋盤加工がおすすめの人は

1.刻印は自分たちで入れてみたいけど指輪の仕上がりはお店の商品と変わらないクオリティーが欲しいという方

2.自分で金槌を使ってきれいに加工するのは自信がないという方

3.ミル打ちなど旋盤加工でしかできないデザインが気に入った方

4.自分たちの指輪が完成する工程を、作るよりも、じっくり見てみたいという方にお勧めです。

※旋盤加工オプションをお選びいただいた場合、制作作業の後半は職人が加工する工程が増えます

旋盤加工のオプションを選ばれても、選ばなくても、MITUBACIの工房に遊びに来た際には「旋盤」という機械をぜひ見ていってくださいね。

旋盤加工で作れる手作り結婚指輪のデザインはこちらで詳しくご覧いただけます。

旋盤・彫金に使う道具のお話
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